しまぞーり 私のウチナーグチ考 しまぞーり

1960年生まれ、一緒に住んでいた祖母や両親との会話は100%標準語、祖母、 両親間の会話は100%ウチナーグチで、それを聞いて育った私なりのウチナーグチに対する思い出や思 い入れを紹介します。

第10回 オバア達の外来語・その5「モビールのてんぷら」 

オバア達の外来語、ネタも尽きたことだし前回で最終回にしようと思っていたのですが・・・ もうすぐ今年も慰霊の日が巡ってくるなあ、と考えていて思い出しました、モビールのてんぷら

 沖縄の行事料理に欠かせないのが、ぽってりと衣の厚い天ぷらなのですが、子供の頃宴席や清明祭でこ の天ぷらをつまみながら、戦争を経験した大人たちがしばしば話題にしたのが、「モビールのてんぷら」 です。「いや、あれーサイタムンやたんやー(あれは大変な代物だったね)」で始まるモビールの天ぷら の話は・・・

私の父や伯父の話。龍譚池で泳いでいたら、自分の泳いだ後に油の航跡ができていた。石に座って休ん でいたら、石が油でヌルヌルしていた。よく考えたら、モビールの天ぷらを食べた後だった。 

親戚のオジイの話。お祝いの後、自宅へ帰ろうとバス停のベンチに座ってバスを待ち、バスに乗ろうと立 ち上がったらベンチは油でべとべと、自分のズボンもおもらしをしたようにシミができていて、とっても 恥ずかしかった。お祝いで食べた天ぷらはモビールで揚げたものに違いない、と思った。

こういう話を実際に聞いていた頃は、単に面白可笑しい話と聞き流していたのですが、今考えると、「何 なの、このモビール油って?」ですよね。父が燃料用の油、と言っていた記憶があるのですが、モビール って石油会社のMobilから来ているのかしらん。ネットで調べてみると、燃料用以外の油脂とありま すがマシン油、グリース、ワックスなどと一緒に並んでいるサイトもあるので、どうやら食用ではなさそ うです。 

 モビールといえば一般的には吊り飾りのことだと思うのですが、沖縄の戦中・焼跡闇市派にとっては食 用油の代わりに天ぷらを揚げた重油のことのようです。戦中・終戦直後の話には戦後生まれの私などには 到底理解で きない、想像もできない話がいっぱいあるのですが、この「モビールの天ぷら」もその一つ。いくらお祝 いに天ぷらが欠かせないからといって、機械用の油で揚げるわけ?カラダに摂取もされず、食べた後パン ツがべとべとになるような油で揚げた天ぷら、そんなに食べたいわけ?と当時天ぷらを揚げていた人達に 突っ込みを入れたくなります。

 食べる時、臭い、とか何か違うぞ、とか思わなかったのかなあ。思ったとしても、それでも食べたかっ たのかなあ。油が無いなら蒸せばいいのに、とも思います。本当に不思議。でも、史上最も熾烈な、 民間人を巻き込んだ戦いといわれる沖縄戦を生き延びた人達が、モビールの天ぷらを食べて頑張ったお陰 で、今の沖縄があるのですね。  

しまぞーり

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