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[ちゃんぷるー・どっとこむ開設記念寄稿]
沖縄そば屋
巡り
文・写真
稲福 達也
【其の三】 オバアのそば
首里のさくら屋のそばといえば、そば通に隠れた人気があり、昼食時を少し過ぎるとすぐに売り切れ
になった。主のオバアが一人で手打ちで作る量だから仕方がないが、その麺の歯ごたえ
は独特
だった。メニューはそばの大・小に小皿に盛った煮付の三種があるだけで、常連客は、入り口の右手の
土間でそばを茹でているオバアに「大一つ」とか「小と煮付」と声をかけ、自分でお茶を入れて出来上
がりを待つ。ある時、初めての女性客が三種しかないメニューから注文を決めかねて、そばの大はどの
位の大きさ(量)か、とオバアに訊いた。少し戸惑ったオバアの答えは、大は小より大きいさぁ、だっ
た。そして自分でも可笑しくなったのか、丸い老眼鏡の中の目が笑っていた。
そのさくら屋も今はない。この頃は、麺が昔ながらの木灰仕込みとか手打ちとかを看板とするこだわ
りの店も増えたが、全てが小綺麗で上品になりすぎて、今では、よれたワンピースにベルトを兼ねたエ
プロンを結び、大きな釜の側で汗をかきながら客をさばいていた細身のオバアの勇姿と会話が懐かしい。
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