[ちゃんぷるー・どっとこむ 応援団 (チバリヨー) 寄稿]

沖縄 (ウチナー) でーびる・その9

 

文・写真 稲福 達也

豚のもてなし

豚の張りぼて 沖 縄には、方言を使った生徒の首にみせしめとして「方言札」を掛け、方言撲滅をはかった歴史がある。 私が小学生の時も学校で 標準語励行週間 (・・・・・・・) がたびたびあり、方言撲滅は形を変えて行われていたが、仲間内や家ではみんな方言を使って いた。そんな時代に本土から転校してきた色白で標準語だらけのN君は、陰で 悪童 (ウーマク) 達に取り囲まれては「 ウヮー (・・・) と言ってみろ」と冷やかされた。 ウヮー (・・・) は豚のことで、ヤマトゥンチュは沖縄の方言の発音ができず ウヮー (・・・) ワー (・・) としか言えないと、子ども達は大人の話を聞いて知っていたのだ。結局、N君の ワー (・・) は何度繰り返しても ウヮー (・・・) にならなかった。今思えば、豚はN君のトラウマになっているかも知れない。
 そんな古い話を思い出したのは、郷土料理屋で一人のヤマトゥンチュを接待している人達の様子を見 てのことだ。次々出てくる豚の料理を、 耳のサシミ (ミミガー) だ、 豚足 (ティビチ) だ、 (ナカミ) の吸い物に 血の炒め物 (チーイリチー) だと説明するが、その度にヤマトゥンチュの箸が止まった。それでも気にすることなく、 豚足 (ティビチ) は脂ではなくてゼラチンだから体に良いとか、沖縄の長寿は豚肉のお陰と少し自慢げに話しなが ら、とにかく美味しいから一口だけでも、と奨めている。豚の泣き声以外は全て食べつくすウチナーン チュは、
めんそーれ (いらっしゃい) ”と歓待しているつもりなのだが、子供の頃のN君の ウヮー (・・・) の話のように、それでは沖縄でセクハラならぬ 豚ハラ (・・・) に遭ったようなものだと、他人事ながら気になったのである。



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