[ちゃんぷるー・どっとこむ 応援団 (チバリヨー) 寄稿]

沖縄 (ウチナー) でーびる・その5

 

文・写真 稲福 達也

ツルさん・カメさん

 私たち夫婦と友人夫婦とそのお母さんとで初めて旅行をした時のことだ。私が旅行社の知人を通して 5人の航空券を手配することにしたが、その段になって、お母さんの名前がどうしても思い出せない。 友人に電話したが連絡がとれず、確か沖縄独特の名前だったと、カメ、ウシ、ナベ、カマド、カマ・・ とあれこれ思い浮かべるのだが、どの名前もしっくりしない。結局、知人が「年配からしてカメさんに しておきましょう」と言うので、それで発券してもらうことにした。出発当日、空港でそれぞれに航空 券を配ると、説明をする間もなく、その名前を見たお母さんが言った。「ワンネー、カメーアラン、ツ ルルヤル!(私はカメではない、ツルだ!)」。それはまさにツルの一声だった。私は平謝りしながら、 どちらも長寿で縁起のいい名前だからつい間違ってしまったと弁解し、搭乗口ではしばしカメになるよ うにお願いした。
   とんだツル・カメ騒動になったが、そんな沖縄の女性特有の名前も、今では年寄りに残るだけになっ た。考えてみれば、庶民の生活の中で生まれたそれらの女性の名前は、ヤマトへの同化を強いられ、風 俗改良として改姓・改名が行われた近代の歴史をくぐりぬけてきた貴重な遺産である。しかし、世界遺 産になった首里城などの建造物のように、名前を再建・保存するわけにはいかないから、それならせめ て年寄りを敬い大事にする風習だけでも残していきたいものだ。 亀
  奄美大島でみつけたカメさん



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