[ちゃんぷるー・どっとこむ 応援団 (チバリヨー) 寄稿]

沖縄 (ウチナー) でーびる・その14

 

文・写真 稲福 達也

犬が吠えると

 沖縄の 門中 (ムンチュウ) というのは、共通の始祖を持つ父系の血縁集団のことで、17世紀に士族層で生まれ、王府の身 分制確立の政策ともあいまって、地代とともに地方や他の階層にも普及したものらしい。祖先の供養が 主な機能で、現在でも清明祭などに門中墓へ集い、血縁としての親睦がはかられているが、知人の医者 が“門中社会は危険がいっぱい”と新聞に面白いことを書いていた。沖縄ではどこそこの門中の一員と いうことを示すために、男子の名前の一字( 名乗頭 (なのりがしら) )にそれぞれの門中で決まった字を使う慣習があるから、同姓同名や名前の似た人が多く、患者 の取り違えがないように細心の注意を払っているというのだ。 首里文化祭
誇り高き士族(首里文化祭)
 それは、病院に限らず、沖縄の至る所でありそうなことなのだが、そのように親族や血脈を重んずる 例として、犬に吠えられたら“ 親類 (エーカ) 親類 (エーカ) ”と唱えると尾を振ると考えられた、という話を本で読んだことがある。しかし、お年寄りが吠 える犬に実際にそうしている様子を見たことがないから、それがいつの時代の話なのか知らないが、要す るに門中社会では“犬も吠えれば門中にあたる”ということか。女房にそんな話をしたら、「小学生の 頃にアメリカの軍用犬にお尻を噛まれたことがあるが、その時“ファミリー、ファミリー”と言えば良 かったのかしら」との返事。私は、「いや、それは通じない。だって米軍の犬ならどう考えても同じ門 中ということはないはずだ」と答えておいた。



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