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今月のレビュー

このページでは、沖縄関連の本、音楽、コンサート、映画などを論評(レビュー)していきます。

今月は、去る6月4日に開催された、玉城流喜納の会関東支部関りえ子琉球舞踊研究所所属 宇夫方 路さんの琉球舞踊初公演「をぅどぅい・うた・しまくとぅば・ひやみかち!」 東日本大震災被 災地支援チャリティー公演を取り上げます。

ひやみかち公演チラシ宇夫方路さんは、私が2年前に1度参加させて頂いた ゆんたくぬくゎい(喜多見で沖縄語を話す会)の事務方を務めていて、その後忙しさにかまけて なかなか参加できない私に、所属する事務所M.A.P.主催の公演のお知らせをさりげなく送ってくださ ったり、ゆんたくぬくゎいの会場が変更になった際はわざわざ知らせてくださったりして、メールの やり取りが細々と続いていました。そして、お会いした時にも感じたのですが、メールの文面から誠 実で思いやりのある人柄が伝わり、その場限りの関係で終わらせたくない方だな、と思っていました。

その路さんが琉球舞踊の教師であることはサイト情報から知っていましたが、その初公演、しかも 東日本大震災被災地支援チャリティー公演の案内を頂いて、これは是非行こう!と出かけてきました。

実は前日娘の高校のPTA役員仲間と12時過ぎまで飲み(このため、久々の福島での強い地震にも気 付かず爆睡^_^;)、暑い日差しを避けるため5時半に起きて畑仕事をした後朝食、息子の部活の弁当 作り、午前中はいつものように家の掃除をしました。普段なら昼食後即昼寝しているところを出か けて行って、2時からの公演で、これはどうしても寝ちゃうなあ、特に伊野波節なんて、絶 対寝る!と思っていたのですが。。。

会場でパンフレットを配っていたのが私のかつての三線仲間で 今月のウチナーンチュにも登場してもらった金城さんで、パンフレットを開いてみたら地謡で 胡弓を弾くのが私の三線の先生の持田明美さん。これで眠気は吹き飛びました。開演を待つ間パン フレットに目を通すと、路さんや師匠である関りえ子さんのきちんとした、誠実な人柄が伝わる挨拶、 路さんが活躍の拠点としている狛江市長をはじめ、関係者の心温まる祝辞、紅型の文様を基調とした センスのよい装丁など、否が応でも期待が高まります。

がしかし!声の美しいアナウンス嬢が公演タイトルの「ひやみかち」を「ひやみちか」と言ったと きにはいささか驚き、がっくりきました。でも最初の「かぎやで風」が始まると、その端正な踊り に引き込まれ、すっかり琉球舞踊の様式美の世界でゆったりとくつろぎ、アナウンスの失敗など忘 れていました。

そして、私が絶対寝てしまうと確信していた伊野波節では、女神のように美しい路さんの姿、 端正な踊りに見とれて、寝るどころではありませんでした。ゆんたくぬくゎいでは長い髪の毛を無造 作に一つに束ね、Tシャツ姿で、はっきり言って普通のちょっときれいなおばさんだった(失礼!) のに、目の前で踊っているのは琉球のお姫様。第二部の金細工では凛々しいイケメンぶりで、 路さんの本職は女優、しかもかなり達者な女優さんなのだと納得しました。

踊りの合間に安富祖流三線師範の新城亘先生が舞台に登場して、舞踊の解説をされていましたが、 これが軽妙洒脱で的確かつ簡潔だったのも良かったです。演目のほとんどは馴染みのあるものでし たが、幼い頃からぼんやり見ていてだけで、深い意味やストーリーなどは知らなかったので、ウチナ ンチュの私にもとても勉強になりました。

思いのほか楽しく華やかな舞台で、眠気など全く感じないまま第一部が終わり、休憩の後、路さん の創作舞踊真鶴の祈りで第二部が始まりました。私は女優としての路さんの舞台を観たこと はありませんが、これまでの舞台で培った演技力、キャリア、そして琉球舞踊を学ぶ中で吸収して きた沖縄の文化、が見事に融合され、被災地の復興への祈りに昇華されている、と感じました。三線 とチェロの合奏、と紹介されてどんな?と訝っていましたが、それぞれの楽器の良さが生かされ、 チェロは哀しみを、三線は希望を表していて素晴らしいと思いました。

琉球舞踊の公演を生でじっくり鑑賞するのは、実はこれで2度目です。沖縄で暮らしている間は、 盆と正月にテレビで放映されているのを漫然と見たり、結婚披露宴、トゥスビー(生年祝い)、敬 老会などの余興で見たりする程度でした。2年前に国立劇場で初めてきちんと琉球舞踊を鑑賞した 時は、踊り手が全員沖縄で選抜された人たちで、衣装や身のこなし、踊り、全て完璧で一部の隙も なく、いやあ、琉球舞踊とは美しく奥の深いものだと心の底から感心しました。

今回の公演では、師範の方たちの踊りはやはり素晴らしかったのですが、群舞では振り付けを間違 えたり動きが妙にたどたどしかったりする人、腰高の人、着付けやお化粧が残念な人もいて、琉舞 道場の発表会の域を出ないと感じる部分もありました。でも、みんな一生懸命で復興への思いが 伝わり、最後の出演者総出の銭掛けの花では、路さんをはじめ皆さん晴れやかな素晴らしい 笑顔が充実感に満ち溢れていて、感動しました。

週末最大の楽しみ、昼寝を犠牲にして鑑賞して本当に良かった、と思いました。そして、舞台女優 としての路さんも是非見てみたい、とも思いました。

6/10/11

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